“it’s just a sweet sad old song”

~”Can We Still Be Friends?”より。

今回はトッド・ラングレンの交友関係における有名なエピソードをいくつかご紹介したいと思います。

いずれもディヴィッド・ボウイとイギー・ポップの関係性のような、素晴らしくてカッコイイエピソードではないところがいかにも彼らしいと思います。

ローラ・ニーロとの関係。

上にあげたのは、Laura Nyro(ローラ・ニーロ)さんのセカンドアルバム「イーライと13番目の懺悔」’68年発表です。

この人とトッドさんの間に具体的なエピソードがあるわけではないけれど、トッドさんはこのアルバムを聴いて、ソウルなど黒人音楽への傾倒を深めたという影響大の人物です。

黒人音楽への傾倒を深めたといっても、トッドさんはそれ以前からモータウンなどの黒人音楽はよく聴いていただろうし、大好きだったはずです。自分でもそういうジャンルの音楽をやろうと思い始めたという意味ですね。

’68年といえばトッドさんはナッズというバンドで活動していて、僕はその作品を聴いていないけど、そのサウンドは当時のブリティッシュ・ロックバンド寄りだったそうです。いわゆるマージービートってやつかな?そして確かにこの年代(‘68)以降急にバンドを解散して、ソロ活動を始めます。

トッドさんの曲をアルバム単位で聴くと、プログレだとかサイケデリックだとか、サウンドコンクレイト的な凝った音作りが強い印象を残すけど、単純にメロディの親しみやすさは、ソウルなどの黒人音楽に通じるものがあります。

曲作りや歌唱法に関して、相当ローラ・ニーロを参考にしていることがわかります。

何よりもトッドさんは白人なわけで、白人が黒人音楽の真似をするのは無理があるので、独自解釈や、自分なりの表現の仕方において、参考になるミュージシャンと言ったら、確かにこの時代だと、ローラ・ニーロさんくらいしかいなかったんじゃないかな?

前回の記事で紹介した、”Baby Let’s Swing”は歌詞の中に登場する「ローラ」という女性へのラブソングですが、このローラがローラ・ニーロさんであることは誰にでも明らかですね。

曲中はこの「ローラ」という言葉がたくさん出てきます。

また、当時はそれまで作曲家として黒人ソウル・シンガーに多数の曲を提供していたキャロル・キングがソロで活動を始めて成功し、のちにピアノを弾きながら歌うスタイルが流行を見せましたが、そうしたスタイルの先駆者としてキャロル・キングさんの他に、ローラさんやトッドさんを挙げることができると思います。

キャロル・キングなどはまさにど真ん中だけど、ローラにしても、トッドにしてもソウルミュージックにどっぷりなミュージシャンな訳です。キャロル・キングはすでに’60年代に黒人ソウル・シンガーやコーラスグループへの曲を多数作り、実際にヒット曲も多数ありました。

こうした流れは白人音楽にブルー・アイド・ソウルというジャンルを確立します。それだけでなく黒人音楽にも変革をもたらし、ダニー・ハサウェイなどの’70年代ソウルの代表者が現れることになります。

そしてトッドさん自身は’84年にはローラさんの7枚目のアルバム”Mother Spiritual”をプロデュースしています。

この時すでにローラは、他の男性と結婚していました。

リヴ・タイラーの育ての親。

世界的カリスマロックバンド、エアロスミスのヴォーカル、Steven Tyler(スティーヴン・タイラー)さんの娘、Liv Tyler(リヴ・タイラー)は女優、モデルとして活躍。音楽活動も少しやっています。

彼女の正式名称は、Liv Rundgren Tylerです。Rundgrenはもちろん、トッド・ラングレンのことです。トッドさんと彼女は育ての親と血の繋がらない娘という関係です。

この複雑な関係を少し詳しく説明すると、リヴの母親、ビビ・ヴュエルはドイツ系のモデルで、もともとトッドさんの恋人でしたが、なぜかスティーヴンと結婚します。二人の間にリヴが生まれた頃スティーヴンは薬物依存症だったため、ビビはスティーヴンと別れようと決意し、子供を連れて元恋人のトッドさんの元へ身を寄せます。

トッドさんは赤ん坊のリヴがスティーヴンと彼女の間にできた子供であることを承知で我が子のように育てます。その後、トッドとビビは別れても、リヴはトッドさんが育て続けます。

その後、トッドさんのライブのバックステージにちょくちょく遊びに来るスティーヴンとリヴはお互い実の親子であることを知らずに交遊することになります。

彼女が9歳の時、スティーヴンのもう一人の娘ミア・タイラーと出会い、彼女が自分に瓜二つなのを不思議に思い、母親のビビを問い詰めると、自分がスティーヴンの実の娘だと知りました。

14歳の時にはスティーヴンの勧めでliv tylerに改名し、その直後モデル業を始めます。彼女が16歳の’93年に父親スティーヴンの率いるエアロスミスの曲”Crazy”のPVに出演し、以後女優として成功していきます。

今現在、この三者の関係性がどうなっているか、お互いの気持ちがどうなっているかなど知る由もないけど、リヴのモデル、女優としての成功のきっかけは明らかにスティーヴンとの親子関係を前面に押し出したことも一因だし、スティーヴンも自分の名前を大いに利用させるために「タイラー」への改名を勧めていますね。

今日でもメディアに取り上げられるのはリヴとスティーヴンの「微笑ましい仲のいい親子」としてのツーショットばかり。

“Rundgren”の名前は育ての親としての恩義から、ミドル・ネームとして形ばかり残っています。

まるでサマセット・モームの小説のような世界ですね。

ジョン・レノンとの論争と確執。

トッドさんはスーパーロックバンド、ビートルズの影響をもろに受けた世代なわけだけど、当然のようにその音楽にもビートルズの影響は感じられます。というか、影響大ですよね。

ビートルズ解散後、ジョン・レノンは日本人アーティスト小野洋子とともにニューヨークのダコタ・ハウスに暮らし始め、ソロとして音楽活動をしながら平和、反戦運動などの社会的活動を活発にし始めます。

’70年代はベトナム戦争が泥沼化して、アメリカの特に若者の間に戦争にはうんざりという気分が強くなっていました。ジョンはすでにカリスマ的存在だったし、ボブ・ディランを筆頭に、ボブ・ディランに影響を受けたフォークシンガーが反戦的な歌詞を歌ってヒットしたりする。そんな時代でした。

ジョンは自身が反戦を歌うだけにとどまらず、自ら反戦活動に携わり、のみならず、女性の権利や、人種差別などの運動にも積極的に参加しました。こうした活動の仕方は、世界的にも好意的に受け入れられたそうです。実際、ジョンはいまだに「愛と平和の戦士」というイメージです。

こうした活動の仕方に唯一異論を唱えたのが、トッドさんでした。’73年のことです。

「ジョン・レノンは革命家ではない。彼は革命を叫んで、馬鹿みたいに振る舞っているが、人はそれを見て、不快に思うだけだ」by Todd Rundgren.

これに関してジョンが応答し、メロディ・メイカー誌上で論争が交わされたらしいです。対談ではなくお互いの言い分を順番に載せ、相手側が次号でその言い分に対し反論・反駁するといった形式だったらしいけど、具体的にどんな内容の論争だったのかは、後追いの僕にはわかりません。興味はあるけど。

ジョン・レノンの上下巻に及ぶ長ったらしくて文章下手すぎる伝記にも、こういうことがあったと少し触れられているだけで、こうしたトッドさんの反抗的な態度も、ジョンは微笑ましく好意的に思っていたといった描写がされているだけでした。

時が経った今なら、トッドさんの言い分も少しは評価されていいような気がします。

面白いのはその7年後の1980年12月、ジョン・レノンはマーク・チャップマンに暗殺されるのですが、逮捕されたチャップマンがトッド・ラングレンの大ファンだという事実があります。

チャップマンの犯行と、この「ジョンとトッドの論争」に因果関係があるのかはわからないけど、深いところで、考え方的な影響は、トッドさんもジョンもチャップマンに与えているでしょう。

犯行前のチャップマンは頭がおかしくなって、自分のアイドルであった、ジョンとトッドのどちらかを殺そうと決め、どちらを先に殺すかをコイントスで決めていたそうです。このコインの結果次第では殺されていたのは、ジョンではなくトッドだった可能性もあるということですね。

ジョンの伝記に書かれているジョンからトッドへの反論らしき言葉といえば、トッドさんの最大のヒット曲である、”I Saw The Light”がジョン自身がビートルズ時代に作った”There’s A Place”に似ているという指摘だけど、言われてみれば、確かに。

でも、これくらいの曲の類似は当然あってしかるべきだし、本来の論争の争点には全然関係がない。

トッド自身はビートルズの大ファンで、2012~17年のRingo Starr And His All Star Bandに参加して、一緒にワールド・ツアーを回っています。

まとめ。Summary.

というわけで、3つほど他のミュージシャンとの関わり的なエピソードを紹介しました。

以前の記事にも書いたけど、プロデューサーとしても優秀な人物なので、いずれは、トッドさんのプロデュース作品で代表的なというか、個人的にオススメな作品をご紹介したいと思います。

今回は、ここまでです。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました!

それでは、またすぐお会いしましょう!

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