さて、僕がすごいと思った本シリーズ中編、前回の続きです。ちなみに、本のタイトルの先頭についている数字はランキングではなく、単なる紹介順の数字ですのでご了承ください。

4 「日本の黒い霧」松本清張

日本ミステリー界の巨匠、松本清張さんの作品です。

戦後日本で実際に多発したいくつかの不可解な未解決事件を、清張さんが独自の調査で自分なりの推理を展開します。

この本で取り上げられる事件は未解決というだけでなく、作者の推論によればいずれも、戦後日本を支配したアメリカ軍GHQの関与がうかがえます。

まさに、「日本の黒い霧」ですね。

しかも、言ってしまえば、アメリカからの支配は現在も続いていると捉えることもできます。かといって、無意味に全否定すればいいわけではなく、どこの国とも友好的な関係を築きたいのですが、本書にあるような無理やりな隠蔽や謀略があると思うと、ドン引きですね。

本書に取り上げられている、「帝銀事件」の平沢貞通さんのように冤罪を着せられて獄中で一生を終えたような被害者は、まさに「政治的謀略に巻き込まれ、人生をねじ曲げられた被害者」です。

かといって、すぐに反米や国粋主義に走るのではなく、全てにおいて鵜呑みにしない、自分で検証してみると言う意識を持つ、目覚めさせることが大事なんです。

それと、松本清張さんをはじめ作家の方達の、作品のために徹底して調査すると言う姿勢には脱帽します。

自分の空想や、それまで培った教養思想の主張のみで、作品を成立させた本にも良書はありますが、やはり、綿密な調査をコツコツと積み重ねることが、良い本を書く条件なんですね。

清張さんは、「霧」と言う言葉が好きみたいです。彼自身が設立した映像制作会社の名前も「霧プロダクション」でしたね。

5 「野火」大岡昇平

一口に「戦争文学」と呼ばれる、大岡昇平さんの代表作。

太平洋戦争が敗戦間近の時期、フィリピンのジャングルの田舎に、使い物にならないからと放り出された主人公が、飢えと乾きと熱帯の暑さにやられながらもさまよい、極限状態の中で、ついに人肉を食してしまうと言う恐ろしいテーマを扱っています。

テーマの深さと、戦争という背景と、人間の極限状態という世界観だけでも、興味をそそられますが、大岡昇平さんの文章がものすごく重厚で、その語り口のうまさにぐいぐい引き込まれていきます。そしてつい、一気読みしてしまいます。

テーマが重すぎるので、初心者のオススメには書かなかったのですが、読みやすさで言えば、初心者でも楽しめるのではないでしょうか?

また、個人的には、大岡昇平さんは、非常に魅力的な人物だと思っています。

好奇心旺盛な人で、特に評価や文壇での地位が固まっていた、老齢の頃まで最新の洋楽のロックやポップスを好んでいたというエピソードが微笑ましいですね。好きだったのが、the doorsとか、ジミ・ヘンドリックスとか、音楽ファンの僕も、急激に親近感を覚えました。

それでも、本人は、多分気難しい人だったと思います。

先に紹介した、「日本の黒い霧」をはじめ、様々な話題作を批判して、論争を繰り広げることも度々だったそうです。

6 「二つの祖国」山崎豊子

「白い巨塔」の原作者として知られる山崎豊子さんの作品。

僕が中学生のとき、風邪をひいて熱があり、布団に潜ってずっとテレビをつけていたら、偶然目に入った大河ドラマ「山河燃ゆ」の第一回。脚本の面白さやそのドラマとしての完成度の高さに、ぐいぐい引き込まれました。主演は、先代の松本幸四郎さん。

そして、一年後の最終回までとても待てないと思って、原作を買いました。それが本書です。

またしても、太平洋戦争の時代なのですが、描かれるのは、アメリカへ住み着いた日系人の子供世代。いわゆる、日系二世です。

彼らにとっては、親世代と違ってアメリカはもちろん祖国ですが、同時に父母の生まれた国日本も祖国なのです。

そんな二つの祖国、日本とアメリカが戦争を始めてしまったら、苦悩するのは当然。しかも、自分たちが今住んでいる国から直接的ではないにせよ、「どちらの味方なのか?」を問われます。まさに究極の質問。

主人公は日本語、英語、両方に堪能であることを買われ、日本のためを思って、あえてアメリカ軍に所属し、早く戦争を終わらせようと志します。

そして、アメリカの勝利という形で望み通り、戦争は終結しますが、日本側の戦犯を決めるべく開かれた東京裁判に通訳として出席し、そのあまりにも理不尽な裁判内容や判決に嫌気が差して、ピストル自殺してしまいます。

まさに時代に翻弄された生涯でした。

最初に書いておくべきでしたが、これは実際にあった出来事、実在の人物を基にしたフィクションであり、作者の綿密な調査を基に描かれています。ほぼノンフィクションと言っていいでしょう。

特に後半のほとんどを占める東京裁判の描写は圧巻です。興味があるならば、ぜひ読んでいただきたい。

さて、本日は以上です。次回は、「僕が個人的に面白い、すごいと思った本10選」の後編・完結編を書く予定です。残りの4作品を一気にご紹介します。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

それでは、またお会いしましょう!

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